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書評:「貧乏人の経済学」 アビジット・V・バナジー&エステル・デュフロ

2021年12月5日

この記事は takanorip Advent Calendar 2021 5日目の記事です。

「貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える」 アビジット・V・バナジー&エステル・デュフロ

僕は貧困というものに興味があった。
SDGsの1つ目の目標にも設定されている貧困問題がなぜ解決しないのか。
発展した国とそうでない国の違いは何なのか。
世の中の解説は「普通な人」の価値観や考え方で「貧乏な人」を論じているようで、どれも的を得ていないように感じていた。

この本では貧乏人を中心に据え、様々な調査や実際に貧困状態にある人へのインタビューを通じて貧乏人がなぜ貧乏なのかをかなり詳細に分析している。
これは非常に面白かった。
貧乏人はただ怠慢であったり無能なわけではなく、様々な環境や制度の要因があったり普通の人とは違う常識に従って生活していたりしていて、それらが結局貧困につながっているらしい。
言われてみればその通りなのだが、深く考えず自分たちの常識にはめて考えてしまうとなかなか考えつかないことだなと思う。

この本は様々な側面から貧乏人を理解しようとしている点も良い。
生活状況から仕事、教育、金融、政治とマクロな視点からミクロな視点まで様々な観点で貧乏人の置かれている状況を分析し、なぜ貧乏人が貧乏なのか、なぜ現状の解決策がうまくいっていないのか、など詳しく書かれていて、貧困問題の全体像を理解するのに非常に良い本だと思った。

貧困問題を解決したいならまず貧乏人のことを理解しろという本書の結論は、すべてのことに通ずる話だなと思ったし、大きな課題であればあるほど問題の渦中にいる人々のことを細かく深く理解することの重要性が増してくるのかもなと思う。

takanorip

digital design engineer. X: @takanoripe